本研究の目的は、社会的・文化的な性別役割分業といったジェンダー視点から、高度経済成長期に誕生した計画空間である都市郊外空間の変容と、そこに展開される住民の生活実践を明らかにすることである。本年度の具体的な課題は、おもに二点に集約される。まず対象地域(大阪府豊中市)でのフィールド調査、次に住民の地域「参加」議論とジェンダー地理学を中心とした理論的枠組みの分析・検討である。 既に提出した交付申請書における2016年度(最終年度)のおもな研究計画は、①リストラクチャリングなどさまざまな変化のなかにある都市郊外空間と住民による地域「参加」の在り様について、ジェンダー地理学の枠組みから再検討することで、本研究の総括すること、②本研究の新たな知見が、ジェンダーをめぐる地理学の国際的な潮流にどのように位置付き貢献し得るのか、英語圏諸国の人文地理学研究における最新の研究動向を通じて確認すること、であった。 上記計画に沿って残すことができた2017年度のおもな研究成果は、イ)ジェンダーや階級などを扱った人文地理学、その他隣接分野の文献により理論枠組みを整理した論考の公表、ロ)日本の事例研究について男/女の二元論を越えた議論を国内外に発信・議論するための国際学会(IGU北京大会)報告、ハ)国際的なジェンダー地理学の動向と本研究の貢献について考えるための会議や研究会等への参加、である。 本研究は、限界点やさらなる検討・議論の余地は残されたものの、これらの研究成果からは、変容する都市郊外空間における住民の地域「参加」やそこにおける実践が彼/女たちの日常的生活において、ジェンダー規範や役割の再構築につながる可能性をもつものであることが改めて導出できた。また、国際的な場において、ジェンダー概念の再検討に関わる議論にも参加でき、新たな研究枠組みの構築機会にも恵まれた。
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