今日、先進諸国では、産業地域の産学官連携を進めることによって、イノベーション創出を図ることが目指されている。本研究の目的は、進化経済地理学の「関連的多様性」概念に着目して分析をすることにより、産業地域の進化過程モデルを構築することである。 平成28年度は、(1)進化経済地理学の概念や理論的検討・課題に関する検討を行う理論研究と、(2)産学官連携によるイノベーション創出を促進・抑制させた要因を分析する調査及びその論文執筆を実施した。 (1)に関して、国内外の文献を精読し、「関連的多様性」概念に関する理論的検討を進めた。 (2)に関して、国内外においてフィールドワーク調査を実施した。海外調査では、ヨーロッパ諸国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、スイス、スペイン)の産業地域を訪問し、地域で取り組まれてきた産学官連携の実態について、聞き取り調査や文献・資料収集を行った。地域で経路依存的に形成されてきた技術軌道だけではなく、国ごとの制度・政策や周辺大都市との位置的関係性などが産学官連携の成果に影響を及ぼすことが示唆された。 今年度の研究成果の1つとして、論文「岐阜県東濃地域における地域イノベーションシステム構築の地域特性」を執筆した。岐阜県東濃地域の経路依存的な産業特性について検討するとともに、岐阜県の科学技術政策・地域イノベーション政策の特徴を考察した。関連的多様性について、製品的な関連性、技術的な関連性、技能的な関連性、投入産出による関連性など様々あるが、この論文では、技術的な関連性としての関連的多様性に着目した。
|