本研究は、近年、日本で増加するネパール人移住労働者を滞日ネパール人と名づけ、彼ら/彼女らの生活実践と労働動態を明らかにすることを目的とする。震災、社会情勢の変化により、調査手法の方針転換を行った。この目的のために本年度は、復興支援活動を行うネパール人達に協力しつつ、個別に滞日ネパール人のライフヒストリー調査と、移民となるネパールの人々を送出する環境について、ネパールでの現地調査を行った。 日本にも多くの移民労働者を輩出するネパールの民族集団、タカリーの12年に一度行われる大祭、ラワペーワにタカリー民族協会から招待を受け、参加した。国内外から集ったタカリーの人々の調査により、帰国後の変化、生活実態を把握し、滞日ネパール人の歴史状況を深く知る上での多くの知見を得た。さらに同大祭に参加していた期間、マイケル・ビンディング、ウィリアム・フィッシャーら欧米ネパール研究者らと日本のネパール研究とその発信について議論した。 在留資格別で上位を占め留学生として日本へ向かうネパール人も急増していることから、ネパールでの留学生を送り出す教育関係者、日本へ向かったネパール人留学生を抱える親族・関係者、および留学希望者へインタビュー調査を行った。日本での受入体制やライフサポートの不備に関し、一部社会問題化している実態と日本政府の現地対応の知見を得た。ブローカーとのやりとり、留学までの一連の流れを確認し、ネパール国内の留学生をとりまく状況を明らかにするとともに移民労働者の増加の歴史的経緯とその重要な背景となっている最新の国際労働市場と経済の国際化の進展についての理解が得られた。以上の調査研究から、滞日ネパール人研究、移民研究の深化につながる知見を得ることができた。
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