最終年度にはカナダにおいて、教団のカナダ支部および教団の運営する大学などの教育施設、女性部等のカナダにおける教団組織の調査を行った。同時に、カナダの難民政策およびカナダにおける教団の歴史について、文献資料を収集した。 本課題研究期間を通じて、本国パキスタン、本部のあるイギリス、居住者の多いカナダなどを調査し、教団のネットワークの実際と人の国際移動の流れ等について、史資料収集およびインタビュー調査等を通じて、立体的かつ動態的な実像をつかむことができたことが、成果である。 本研究の目的は、ディアスポラ状況における複層的なアイデンティティとジェンダーの問題は、グローバル化の影響を受けた極めて現代的な現象であるという観点から、(1)背景と実態の把握を行うことであった。その際には(2)故地を追われ、帰還の見込みのないディアスポラ移民、そのなかでも女性のライフコース選択に焦点を当てる。(3)トランスナショナリティやグローバル化、ディアスポラ社会における宗教とジェンダーに注目し、理論化することをめざした。 (1)の背景と実態の把握は主に統計資料から、(2)は女性たちの語りから明らかにすることができた。 以下の4点を明らかにする計画であった。1)教団がディアスポラに至る背景と、移民規模、生活基盤、ネットワーク、第2世代の教育等のディアスポラの実態と、そのすべての局面におけるジェンダー。2)教団の女性部など女性組織の運営、選挙、女性同士の交渉や意思決定のなされかた、信徒同士のネットワークの内実などの把握・分析。3)女性たちの移動の事例収集およびライフ・ヒストリー調査。4)帰属意識とことばに対する認識およびホスト社会や国家との関係。特に2,3については、十分な調査ができたと考える。
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