研究課題/領域番号 |
26770295
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
今堀 恵美 聖心女子大学, 文学部, 非常勤講師 (50600821)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文化人類学 / ものづくり / ジェンダー / 中央アジア / 社会人類学 / ポスト社会主義 |
研究実績の概要 |
研究2年目は理論研究及びこれまで収集したデータ整理を中心に行った。 ピースワーク従事者をめぐる研究では、工芸制作における制作責任者(たとえば「職人」)とピースワーク従事者(たとえば「内職」)との間における差は、単に技量の優劣に基づくのではなく、当該社会が有するピースワークという働き方をめぐる社会認識(たとえば「内職とは老婦女が家事の片手間に行う仕事であり、主な家計の担い手がする仕事ではないため、高い給与が支払われる必要はない。また内職の仕事内容は単純作業もしくは単純加工のため、誰でもできる」など)が関係するという視座で進めている。実際には職人と呼ばれる人たちと変わらない技量を有し、一家の家計を担うピースワーク従事者など状況は多様である。 ではなぜピースワークに従事する人が現れるのだろうか。日本ではピースワーク労働の主たる担い手として子どもをもつ既婚女性が挙げられる。彼女たちは育児や家事、介護などと常勤の仕事との両立が困難であることからピースワークという働き方を選好する。一方、ウズベキスタン、特に村落部では農業の民営化で労働力が過剰となり、働き盛りの男性はロシアをはじめとする外国に出稼ぎに行くことが急増した。だがイスラーム的価値観が強い村落部では自らの子どもをロシアで教育することを好まない層もおり、既婚未婚を問わず女性は長期で出稼ぎに行かずに刺繍などのピースワークに従事して収入を得る選択をする人もいる。 両国に共通して技量があってもピースワークを選好する理由として、個人による安定した販路確保が困難という点が挙げられた。ピースワークの場合、顧客の有無に関わらず作業量で賃金が支払われるため、リスクが少ないと考えられているのである。今後の研究課題は、リスクの少ない働き方を選好せざるを得ないピースワーク従事者の状況をフィールドワークから明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が今年夏に妊娠していることが判り、年齢も高齢であったため、衛生状況が十分に整っておらず、日本ほどに緊急時の救急体制も整っていないウズベキスタンの村落部でのフィールド調査を困難と考え、日本での作業のみに切り替えた。その後、2016年2月19日に無事に出産を迎え、その後は育児にも従事しているため、当初の研究計画よりも遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度前半は乳児を抱えているために海外調査は困難と考えている。したがって日本において理論調査およびデータ整理に専念したい。もし母子ともに体調が安定していれば、2017年2月頃にウズベキスタンにフィールド調査を実施することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が妊娠出産を経験したため、予定していた海外でのフィールド調査が十分に実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にフィールド調査を行うことで予算を使用する予定である。
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