研究課題/領域番号 |
26770300
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
栗田 梨津子 広島大学, 総合科学研究科, 助教 (10632672)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | オーストラリア / 多文化主義 / 先住民 / アフリカ系難民 / スーダン人 / 白人性 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度までに明らかになった多文化主義下の両集団の社会的位置づけおよび両集団の社会経済的状況を踏まえた上で、引き続きアデレードでの現地調査を実施し、先住民およびアフリカ系難民の間に緊張関係或いは友好関係が生まれる諸要因について分析・考察を行った。とりわけ、アデレード北部・北西郊外の貧困地区に居住する先住民およびアフリカ系難民を対象にライフヒストリーの聞き取り調査を実施し、主に日常実践における白人との経験、両集団間の社会関係、「ブラック」としての自己認識という観点から分析し、多文化主義に内在する白人性との関連で考察を行った。現地調査では、補足的に、両集団に対し様々な福祉支援を提供してきたコミュニティセンターの職員や教会関係者への聞き取り調査も実施し、当該地域における両集団の社会関係の変遷について、ローカルな視点からの情報を得ることができた。 また今年度は、現地調査に加え、これまでに得られた研究成果の一部を国際会議等で発表することで、本研究の理論化の基礎となる視点を得ることができた。今年度の研究の意義は、1.オーストラリア主流社会が両集団に対して付与したブラックネス(黒人性)の意味合いにズレが生じていること、2.ブラックネスにおける矛盾を反映し、両集団の「ブラック」としての自己意識にも差異が存在すること、3.そのような認識の違いが、両集団が保持する白人性の度合いに起因すること、を明らかにしたことである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、現地調査を通して本研究の遂行に必要なデータは獲得できたものの、学内の業務等により、データの整理・分析および理論構築までには至っていない。但し、データの分析に必要な理論的枠組みに関する文献研究は着実に進んでいるため、今後はデータを理論へと接合し、研究の総括に向けてさらなる理論化を進めていくつもりである。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で明らかになった白人、先住民、アフリカ系難民間の黒人性の認識の違いに着目することで、オーストラリアにおける白人性の特性を浮き彫りにすると同時に、反多文化主義の時代における白人性によるマイノリティ集団の包摂と排除のメカニズムに関する理論構築を行う予定である。また、最終年度は、データの分析を基にさらなる理論化を行った上で、研究成果を国内外に幅広く発信していくつもりである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学内の業務等により、現地調査の期間を当初予定していたよりも短縮したため
|
次年度使用額の使用計画 |
国際学会等での研究成果の発表に関する費用として使用する予定である
|