本研究では、中国で伝統的な家父長制支配からの女性解放を目指すために制定された婚姻法を対象に、それが成立した立法背景、改正過程および法解釈に見られる特徴についてジェンダー視点からの検討を試みた。その結果、中国の婚姻法には、西洋近代法においてもみられる平等な主体間における私権を規律する市民法という性格のほかに、中国共産党による家族管理政策を「合法」的に推し進めるための手段たる法的性格を持ち合わせていることが明らかになった。また、こうした特徴を台湾と韓国の関連法制度と比較し、中国婚姻法における個人より家族共同体を重視する家族観を浮き彫りにすることができた。
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