体制転換後のロシア司法は、憲法裁判所、仲裁裁判所、通常裁判所という3系統の体系によって運営され、欧州人権裁判所も紛争解決に重要な役割を演じている。司法改革もまた、裁判所の多元性の影響を受ける。民事事件一般から切り離された仲裁訴訟は、市場経済の要請を受け、速いテンポで発展した。その結果、最高裁総会決定を主とする従来の法令解釈の統一のあり方に変化が生じ、司法制度の機能の西欧化が進み、民事手続改革を触発した。それは結果的に政治部門の否定的反応を引き起こし、2014年の憲法改正をもたらしたが、このことは逆説的ながら体制移行国における裁判所体系の多元性が肯定的役割を果たしうることを示すものである。
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