1.日本法社会学会2016年度学術大会(於 立命館大学朱雀キャンパス)・ミニ・シンポジウム「≪法≫を見るための≪理論≫」において,研究報告(「Roberto Ungerにおける法社会理論」)を行った。本報告は,Roberto Ungerの法理論および法学方法論の基本概念や研究課題(主流派法学批判,制度としての法,社会構造としての法,社会の法-制度構造を構想する学問としての法学)の意義を,哲学・社会理論・政治理論を含むRoberto Ungerの著作全体のなかに適切に位置づけて明らかにしたうえで,こうしたUngerの法社会理論と法社会学的な法理論・研究課題がどのようなかたちで接続可能であるかを探求しようとしたものである。 2.吾妻 聡「批判法学制度派の研究プログラム:Roberto Ungerは法をどのようなものとして視るのか」を執筆した。本論文は,上記学会報告の内容を以下のポイントに力点をおいて発展させたものである。Ungerの批判法学制度学派において,法は,社会生活の形式の制度的表象として捉えられ,そして法学は,法の基本構造の変化の端緒(制度の不確定性)を的確に把持することによって法-制度の基本枠組を構想することのできる大きな知的プロジェクトとして再構成される。Ungerは主流派法学の厳しい批判者として知られるが,そうした彼の「批判法学」は,法学が本来持っているはずの“制度の変容可能性を視る力”・”新しい制度を構想する力”を,既存の法の諸理論が「法の神秘化・必然化・価値自由化」を通して弱めてしまうという彼の問題意識に基づく。こうして,批判法学制度派は,(1)法学批判を徹底して法を覆う神秘化のベールを剥がし,(2)制度的仕組の本来的多様性・別様可能性を明らかにし,そして(3)この可能性を彫拓して社会の基本構造の代替案を新たに提示するという研究課題を自らに課すこととなる。
|