フランスにおける宗教的着衣規制立法は、2004年スカーフ禁止法、2010年のブルカ禁止法と二度に渡って実現した。2012年に成立したオランド政権下においては、禁止立法という方法に一定の反省が提示され、「ライシテ憲章」の配布・掲示といういわば「ソフト」な路線が選択された。学校教育という共和主義の原点に立ち戻ったともいえるかもしれない。しかしながら、2014年の欧州人権裁判所判決はブルカ禁止法に正当性を認めたため、宗教的着衣規制はフランス以外の欧州諸国に拡大する兆しを見せている。また、私立保育所職員解雇事件を通して、宗教的着衣規制は公共空間のみならず、労働空間にまで拡大することとなった。
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