研究課題/領域番号 |
26780010
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
稲村 健太郎 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (70707827)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 相続税法 / 財産評価 / ドイツ / 租税法 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、昨年度行った学会報告における議論等を踏まえ、引き続き調査研究を行った。 ドイツ相続贈与税法は遺産ではなく無償の財産増加に課税することとしている。これが利得主義と呼ばれる考え方である。ドイツ相続贈与税法の基本的な考え方は、遺産取得主義に基づく利得主義であるとされている(この点、法定相続分課税方式を採用している日本とは異なる)。一方で財産の評価は期日主義によって行うこととされている。期日主義は財産評価の時点を被相続人の死亡の日などの税の発生時点で行うべきであるとする。 遺産を無償で取得したことによる財産増加のタイミング(相続人が財産を利用可能になる時点)と、税の発生時点は異なる場合もある。被相続人の死亡の日に財産が利用できない状態にあり、後日利用可能になった場合には、その間に財産の価値が下落する場合がある。このとき利得主義と期日主義の関係が問題となる。 この点について遺言執行が遅れたことによる国外財産の為替相場の変動による損失は考慮しないこととした事例や、住宅火災により相続後に生じた損失は考慮しないこととされた事例、債権が税の発生時点以降受けた損失は考慮しないこととされた事例などがあり、期日主義を厳格に適用するものが多い。 しかし、不可抗力による期日以降の価値下落等については対処すべきとの見解もある。連邦憲法裁判所1995年6月22日判決は、個々の事例においては期日主義の適用が生存を脅かす効果を有することを指摘しており、その後の連邦財際裁判所などでも同様の指摘をしているものがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は本研究課題に関する論稿を発表したものの、予定していた訪独を延期したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は引き続き文献や判例の整理を行うとともに、ドイツの租税法学者と面談等を行うことにより、ドイツにおける災害時の財産評価について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた訪独を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
延期した訪独を平成28年度に行い、その直接経費に充てる計画である。
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