研究課題/領域番号 |
26780018
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
奥村 公輔 駒澤大学, 法学部, 准教授 (40551495)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コンセイユ・デタ / 執行府の憲法解釈 / 法制諮問機関 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、日本における執行府の憲法解釈権の構造の検討を行うために、その比較対象となるベルギー・ルクセンブルク・フランスにおけるコンセイユ・デタ(法制諮問機関)に関する制度及び議論を調査・検討した。 ベルギーのコンセイユ・デタに関しては、その制度を調査するとともに、憲法適合性統制に関する憲法裁判所との関係についても検討した。その成果として以下の2つの業績がある。奥村公輔「ベルギーのコンセイユ・デタ立法部関係法令集」駒澤法学14巻3号(2015年)23-48頁、同「ベルギーにおけるコンセイユ・デタ立法部による事前統制と憲法裁判所による事後統制」駒澤法学14巻4号(2015年)61-88頁。 ルクセンブルクのコンセイユ・デタに関しては、その詳細を調査・検討するための文献が見当たらず、以下の関係法令集を邦訳するにとどまったが、その制度の概要を理解することができた。奥村公輔「ルクセンブルクのコンセイユ・デタ関係法令集」駒澤大学法学部研究紀要73号(2015年)43-56頁。 フランスのコンセイユ・デタに関しては、論文としてその成果を発表することができなかったが、その研究は進んでおり、2015年2月27日に、国立国会図書館調査及び立法考査局の説明聴取会において、「憲法の有権解釈機関としてのコンセイユ・デタ」と題する報告を行った。その際、同調査局の専門調査員・調査員と有意義な質疑応答を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、比較法的に検討することを通じて、執行府の憲法解釈権の構造を分析することを目的としている。わが国において内閣法制局の憲法解釈が政府の憲法解釈と密接に関連しているように、執行府が憲法解釈を行う際には、法制諮問機関がその過程に深く関わっており、そのために、諸外国の法制諮問機関の制度及び議論を調査・検討することが必要であった。ベルギー・ルクセンブルク・コンセイユ・デタにはそれぞれ法制諮問機関としてコンセイユ・デタが設置されており、そこで、本年度は、ベルギー・ルクセンブルク・フランスにおける法制諮問機関であるコンセイユ・デタに関する制度及び議論を検討し、これを明らかにすることができた。そして、その成果として3本の研究業績を出すことができ、また、1つの研究報告(国立国会図書館調査及び立法考査局説明聴取会)を行うことができた。したがって、当初の目的を果たすことはできたと言えよう。ただし、本年度は、ベルギー・ルクセンブルク・フランスのコンセイユ・デタの関係者に対してインタビュー調査を行う予定であったが、諸般の事情によりこれを行うことができなかった。 また、本研究の作業と連携しながら、自身が分担者となっている基盤研究(C)「ヨーロッパ型憲法裁判所の制度的基盤とその現代的変容」の研究成果として、以下の論文を執筆した。奥村公輔「ベルギー憲法裁判所の制度の概要」駒澤法学14巻1号(2014年)149-210頁。執行府の憲法解釈と裁判所の憲法解釈は相互に関連しており、その前提としてのベルギーの憲法裁判所の制度を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
執行府の憲法解釈権の構造を比較法的に分析する上での前提として、ベルギー・ルクセンブルク・フランスの法制諮問機関としてのコンセイユ・デタの制度を明らかにすることができたので、次年度は、執行府における憲法解釈権の主体である政府の憲法解釈権に関する議論を検討する。ただし、ベルギー・ルクセンブルクに関するその議論は管見の限り見当たらなかったので、フランスを比較対象として、大統領及び内閣の憲法解釈権の所在・実態を検討し、論文を執筆していく。その論文の中で、今年度及び次年度の比較法的分析を踏まえて、日本法への示唆を検討する。 また、フランスのコンセイユ・デタに関しては、今年度は論文としては発表できなかったので、次年度は、これに関する論文も執筆する。さらに、今年度はベルギー・ルクセンブルク・フランスのコンセイユ・デタの関係者にインタビュー調査を行うことができなかったので、これを行い、文献から得た知識に加えて、その詳細な実態をも明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、フランス・ベルギー・ルクセンブルクのコンセイユ・デタの関係者にインタビュー調査をし、また、現地で資料収集を行う予定であったが、これを行うことができなかった。したがって、国外旅費を一切使うことができなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も本年度に引き続き、フランス・ベルギー・ルクセンブルク・日本の憲法学、特に、執行府の憲法解釈に関する文献を購入していく。日本では入手困難なフランス・ベルギー・ルクセンブルクの文献に関しては、本年度に現地で資料収集する予定であったが、本年度はこれを行うことができなかったので、次年度にこれを行いたい。
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