平成27年度は、日本における執行府の憲法解釈権の構造の検討を行うために、その比較対象となるフランス及びベルギーにおけるコンセイユ・デタ(法制諮問機関)に関する制度及び議論を調査・検討した。 フランスのコンセイユ・デタは、政府提出法律案についての義務的諮問を受けた際や政府から法律問題について任意的諮問を受けた際に、憲法解釈を示すことがあるが、政府は、コンセイユ・デタの憲法解釈に必ずしも従うことなく、独自に憲法解釈を示すことができることを明らかにした。その成果として以下の2つの業績がある。奥村公輔『立法手続と権力分立』(信山社、2016年)全328頁、同「フランスにおける憲法解釈機関としてのコンセイユ・デタ行政部」レファレンス783号(2016年)87-107頁。 また、ベルギーのコンセイユ・デタについても、その制度を概観し、政府の憲法解釈とコンセイユ・デタの憲法解釈との関係についても明らかにした。その業績として以下の1つの業績がある。奥村公輔「ベルギーにおけるコンセイユ・デタ立法部による事前統制と憲法裁判所による事後統制」曽我部真裕=田近肇(編)『憲法裁判所の比較研究――フランス・イタリア・スペイン・ベルギーの憲法裁判』(信山社、2016年)193-215頁。 本研究課題は、主にフランスにおいて政府(大統領及び内閣)が憲法上のいかなる条文に基づいて憲法解釈を示すことができるのか、その理論的根拠を明かすことが目的であるが、そこまで明らかにすることはできなかった。しかし、平成29年度発行の論文集において「フランスにおける大統領の憲法解釈権」と題する論稿を提出する予定であり、その論稿の準備をある程度進めることができた。
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