本研究は情報プライバシー権の基礎理論についてアメリカとヨーロッパとの対比を行いつつ,日本における情報プライバシー権をめぐる諸課題について検討した。個人の「自由」の理念に基づきプライバシー権が生成されてきたアメリカと,人間の「尊厳」の思想に立脚してプライバシー保護法制を整備してきたヨーロッパとの比較法研究を行った。そのうえで,アメリカやEUにおいて論争となってきた忘れられる権利やプロファイリングされない権利等について,日本の人格権論,さらには個人情報保護法制への課題を明らかにしたうえで,日本の情報プライバシー権論が個人の「尊重」の理念に照らして発展してきたことを検討してきた。
|