本年度は、本研究課題がその一端をなす、グローバル化と国内民主政、国内憲法に関する研究を総括する一年となった。 具体的には、まず、ドイツにおける国際法親和性原則について研究を進め、論文の形にした。これについては、国内外で資料収集や意見交換、聞き取り調査を行った。中でも、2016年8月末から9月初頭にかけて、ドイツ連邦共和国は、トリアー大学を訪れてProelss教授に行ったインタビューは特筆すべきものである。教授は、ドイツにおいては少数説に位置付けられる見解をとるものの、論理的かつ明晰で、我が国に対する示唆も多いものであった。上述した論文の執筆にあたっては、大変有意義なものとなり、その一部分については調査旅行時にすでに刊行済みであったが、のちに述べる書籍化に際して、大きな助けとなった。 上記論文の一応の完成後(厳密には、一部では並行しつつ)は、これと大学院博士課程以来執筆してきた諸論文をまとめて、再構成し、モノグラフィーとする作業に取り掛かった。こうして2017年2月に上梓したのが、『グローバル化と憲法ーー超国家的法秩序との緊張と調整』(弘文堂)である。これは単に既存の論文を収録しただけの論文集ではなく、一貫したテーマのもと、構成も一部では大幅に変更してまとめ直したものである。まだ出版後、日は経っていないが、一定の評価を得ており、書評会の実施もすでに2件決定している。 また、上記の研究を進展させるに際して、国際法研究者や行政法研究者などとの研究会を通じた交流を進め、最終段階では、研究成果の概要を原田大樹京都大学教授を研究代表者とする科研費研究会で報告した。
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