研究課題/領域番号 |
26780026
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
竹村 仁美 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (10509904)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際刑事裁判所(ICC) / 国家の協力義務 / 実効性 / 国際刑事司法 / 国際刑事裁判所協力法 / 国際刑事法廷 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、条約によって設立された国際刑事裁判所に対する国家の協力義務の内容、性質並びにその範囲を明確にすることを通じて、国際刑事裁判所の実効性確保並びに国際刑事司法全体の実効性の確保、法的安定性の一層の強化に貢献することである。この目的を達成するため、次の三点を研究の柱として設定する。 (1) 国際刑事司法の正当性・正統性評価と国際刑事司法の実効性確保の関係性の明確化 (2) 国際刑事裁判所に対する国家の協力義務の内容・性質・範囲の明確化 (3) 各国際刑事法廷の国家の協力義務に関する比較検討。 平成26年度は、計画通り、上記研究内容のうち(1)及び(2)の研究を推進した。平成26年9月にオランダ・ハーグの平和宮図書館へ赴き文献収集に努めた。資料収集と並行して、同月8日、ハーグにある国際刑事裁判所検察局及びオランダ安全司法省を訪れ、国際刑事裁判所への国家の協力義務の履行状況について、それぞれ聞き取り調査を行った。また、同月16日、イギリスの外務・コモンウェルス省の国際組織部門戦争犯罪チームの副チーム長に対して、国際刑事裁判所への協力義務に関して日本から電話インタビューを行った。これら基礎的調査に先立ち、研究の内容・方法等について国際法研究者から意見を頂くため、平成26年度には、愛知国際法小研究会で6月28日に「国際刑事裁判所に対する国家の協力義務の内容と法的基礎」と題して報告を行った。また、基礎的調査を踏まえた平成26年度中の成果の一部は、同年度中に「国際刑事裁判所に対する国家の協力義務の内容と法的基礎(一)」愛知県立大学外国語学部紀要地域研究・国際学編第47号(2015年3月)pp.235-271、国際刑事裁判所に対する国家の協力義務の内容と法的基礎(二・完)」愛知県立大学大学院国際文化研究科論集第16号(2015年3月)pp.111-136に公表する機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、研究の基礎として、オランダの国際刑事裁判所での聞き取り調査、オランダの平和宮図書館での資料収集、日本での資料収集、書籍購入等を計画通り進めることができた。それに加えて、オランダ及びイギリスの関連省庁のご協力を得て、現地での聞き取り調査又は電話での聞き取り調査がかなったことにより、一部平成27年度の研究計画を先取りする形となった。オランダについては、ハーグが世界の法的首都であり国際社会の法の支配の中枢を担っているという同国民の認識の下、国際刑事裁判所に対する協力姿勢が非常に強く、聞き取り調査の内容も骨太のものとなった。 以上のとおり、実証研究は、比較的円滑で計画以上に進んだ側面もある。他方で、本研究の柱の一つである「国際刑事司法の正当性・正統性評価と国際刑事司法の実効性確保の関係性の明確化」については、以前の研究課題と本研究課題とを架橋する重要な理論分析をすべきところ、国際法の基礎理論の研究を含めた国際刑事司法に関する体系的理論構築が必要となり、期待される進度で研究が行えていないよう感じる。 国際刑事司法の正統性の意義と国際刑事裁判所の実効性については、それぞれ別個の形であるが、九州国際法学会年報第43号(2012)及び九州国際法学会年報第44号(2013)へ過去の九州国際法学会での2つの報告を4000字程度にまとめて2本とも平成26年11月に脱稿した。その過程で、改めて正統性評価の内容について、実効性との関連を意識しながらまとめる機会を得た。ここで、正統性と実効性との関連について熟考する契機を得たので、まずは、この短い2つの文書を手がかりに、実証研究のみならず基礎理論研究の要素を確保しながら、当初の計画に近づける形の進行状況で研究を進めるよう一層の努力をする。
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今後の研究の推進方策 |
今後は「国際刑事司法の正当性・正統性評価と国際刑事司法の実効性確保の関係性の明確化」について理論的分析を進め、本課題の理論研究の側面を確実なものとする。並行して、平成27年度も諸国について、国際刑事裁判所に対する協力義務に関する国内法状況を整理し、必要に応じて、電子メール、電話を用いた聞き取り調査、現地調査を実施する。 平成27年度は上述の研究の柱である(1)「国際刑事司法の正当性・正統性評価と国際刑事司法の実効性確保の関係性の明確化」と(2)「国際刑事裁判所に対する国家の協力義務の内容・性質・範囲の明確化」について、研究成果を日本語だけでなく、英語でまとめて行く努力を続ける。 研究成果の口頭報告についても、引き続き、研究発表の場を模索しながら、研究者らから批判的検討を頂いて、定期的に研究の内容を見直す機会を確保する。さらに、研究者以外に幅広い読者の想定できる媒体への研究成果発表の機会も探っていきたい。 現状、研究計画に大幅な変更点は見当たらず、当初の予定通りに研究を行っていく。
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