研究課題/領域番号 |
26780026
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
竹村 仁美 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (10509904)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際刑事裁判所(ICC) / 国家の協力義務 / 実効性 / 国際刑事司法 / 国際刑事裁判所協力法 / 国際刑事法廷 |
研究実績の概要 |
本研究は、条約によって設立された国際刑事裁判所に対する国家の協力義務の内容、性質並びにその範囲を明確化することを通じて、国際刑事裁判所の実効性確保並びに国際刑事司法全体の実効性の確保、法的安定性の一層の強化に貢献することを目的としている。特に次の三点を研究の支柱とする。 (1) 国際刑事司法の正当性・正統性評価と国際刑事司法の実効性確保の関係性の明確化 (2) 国際刑事裁判所に対する国家の協力義務の内容・性質・範囲の明確化 (3) 各国際刑事法廷の国家の協力義務に関する比較検討。 平成27年度は、(2)についてドイツ及びオランダで現地調査を行い、オランダ・ハーグでは平和宮図書館で昨年同様資料収集に努めた。ドイツは、2000年12月に国際刑事裁判所規程を批准し、批准に先立って、2000年に国際刑事裁判所規程批准法が制定され、2002年には、国際刑事法典が制定されている。これらの国内法規範が国際刑事裁判所へのドイツの協力義務を果たすために重要な役割を果たしていることを踏まえ、国家協力に関する総合的課題につき、ドイツ連邦司法・消費者保護省で国際刑事裁判所担当者、その他同省職員らにインタビューを行った。その他、ハンブルク大学法学部の刑法助手とも面会の機会を得た。オランダでは国際刑事裁判所も訪問し、国際刑事裁判所の日本人判事、日本人職員及びインターン、在蘭日本大使館一等書記官と会い、国際刑事裁判所の実効性に関して率直なご意見を拝聴する貴重な機会を得た。 具体的研究成果としては、(1)と(2)の部分について、拙いものとはなったけれども、九州国際法学会の第168回例会にて7月に「国際刑事裁判所の実効性の確保と国家の協力義務」と題する報告の機会を得た。また、平成27年度8月まで(1)-(3)の横断的な課題である国家元首等の免除の問題について国際法外交雑誌へ論文を投稿する準備に没頭した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は学会誌への投稿を中心に研究活動を進めた。平成26年度に十分達成できなかった「国際刑事司法の正当性・正統性評価と国際刑事司法の実効性確保の関係性の明確化」という課題に関する理論的研究について、平成27年度前半に行った九州国際法学会での研究報告などで理論的側面の研究に一定の蓄積と実績を得た。また、学会、研究会における質疑応答を通じて、自身の浅識を省みることができ、今後の研究の理論的展開の方向性に示唆を得た。 平成26年度に続いて、平成27年度も予定通り、国際刑事裁判所に対する国家の協力義務について調査するためドイツを訪問し、適当な人物との面会を行って実証研究を進めることができた。ドイツでの聞き取り調査では、国際刑事裁判所からの国家への協力要請について、刑事事件の性質上、具体的な逸話を得ることが困難であり、抽象的な話に終始するという限界にも直面した。とはいえ、具体的な国内法整備の紹介などを受けて、聞き取り調査により一定の成果を得た。 国際刑事司法の正当性、実効性を左右し、国家の協力義務との関連で非常に困難な問題を提起する国家元首等の外国刑事管轄権からの免除の問題について平成27年度中に学会誌へ論説として論文を投稿できた。他方で、平成27年度は英語での研究成果発表に向けた努力について、進捗状況は捗捗しくなかった。しかし、日本語の研究成果については一定の実績ができたので、日本語での理解をもとに、英語でも研究成果をまとめていくよう努力を続けたい。 今後も、当初の研究計画通りに研究を進められるよう、常に研究計画と現在の進捗状況を照合しながら、計画的な研究に努める。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度に当たる平成28年度は研究計画の第三の柱である「各国際刑事法廷の国家の協力義務に関する比較検討」について、各国際刑事法廷を取り上げ、計画的に研究を推進する予定である。 国家の協力義務と国家元首等の刑事管轄権からの免除について蓄積した研究成果を背景に、今後、国際刑事司法の実効性を実際に阻害している実際的要因やそれを打開するための利害関与者の役割と責任について検討していきたい。 研究の最終年度内に国際刑事司法の実効性評価について、その指標を理論的且つ実証的に明らかにする。最終年度に当たる平成28年度も定期的に成果を公表する機会を確保するよう努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
三千円弱の未使用額が生じた主な理由は、図書や旅費としての執行が困難であるほど少額であり、年度内の執行不能と判断したからである。また、年度内に少額の備品を購入するよりも来年度の予算と合わせて計画的に執行することが妥当と考えた。しかし、今後、このような事態になるべく陥らないよう、合理的な予算の立案と計画的な執行に努める。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額については、研究最終年度の補助金と合わせた上で、研究計画にかなった図書の購入などに充当したい。
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