本研究は、2010年以降のドイツ労働協約制度の変容を契機に、集団的労働条件決定のあり方を検討したものである。ドイツでは伝統的に、労働協約は国家法にも広く優先してきたが、本研究では、その理由が産別組合の巨大な組織基盤とそれを制度的に支えてきた協約単一原則(一つの事業所に一つの労働協約しか適用されないというルール)にあることが分かった。それゆえ、2010年に同原則が廃止され、労働組合の統制力が弱まると、協約自治への国家介入を強める改革が行われるようになっている。このことから、国家と労働者代表の権限関係を決定する際には、それぞれの主体の規範的位置づけだけでなく、その機能を踏まえる必要性が示唆される。
|