研究実績の概要 |
本研究は、効率性の抗弁を中心として反競争的行為が正当化される場合を総合的に検討することを目的としている。 第一に、効率性の抗弁に関する成果として、柳武史「カナダ競争局の2011年企業結合ガイドラインにおける効率性の考慮」立正法学論集51巻1号(2017年)を公表する(掲載確定)。これは、カナダ競争法96条1項が規定する効率性の抗弁をめぐるガイドラインの記述を全訳するとともに、若干の検討を加えたものである。そこでは、企業結合当事者の証明責任が強調されるに至った等のアップデートがなされた意義があるが、効率性の抗弁の解釈全般について示唆に富んだ判示をしたTervita事件連邦最高裁判所判決以降の展開も重要となろう。 第二に、我が国独占禁止法における正当化事由に関する成果として、柳武史「価格カルテルと行政指導:東京高裁平成28年9月2日判決」『平成28年度重要判例解説(ジュリスト臨時増刊)』264-265頁(2017年)を公表して、①行政指導による強制といえるか、及び②行政指導に従ったといえるかという論点を取り扱った裁判例について、正当化事由との関わりも踏まえて分析を行った。 第三に、経済法と密接に関係する国際経済法に関する成果として、英語の研究論文であるTakeshi Yanagi, Justification under International Economic Law: from the perspective of the SPS agreement, Rissho Law Review, Vol.50, No.2, PP.1-46 (2016)を公表して、福島第一原子力発電所事故によって米国が福島県産牛乳を輸入停止した例を取り上げ、SPS協定と関連した過去の紛争事例も踏まえて、衛生植物検疫措置が正当化される場合を考察した。
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