本研究では,就労が権利性と義務性の二面性を有することに着目し,労働法と社会保障法の連携の場面における対立とその関係について考察した。比較法的検討と概念整理によれば,労働の場面における集団的自主的解決と直接法規制との関係は,労働法と社会保障法の場面での就労の義務性の強調と関係していた。現在の日本では,正規・非正規労働者の待遇格差問題に対して,社会保障ではなく労働条件への直接的法規制,とくに同一労働同一賃金原則の適用による対応が採用されているが,このことは,これまでの生活給的な考え方を基礎とした伝統的な日本型雇用システムとの関係で,社会保障のあり方にも変化を促す可能性があることを示した。
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