まず、雇用保険法の改正に関して、65歳以上への適用について検討した論考では、雇用保険の年齢基準が変化した要因を検証し、諸外国との比較も視野に入れ、「長期的な課題として、本当に不可欠な年齢基準か否かを検討し、徐々に見直しを進めていくほかない」との提言を行った。また、職業訓練について、高年齢者を念頭に置いた職業訓練は、これまであまり考えられてこなかった。高年齢者の学習にはいくつかの特性があり、キャリアアップのためという学習ニーズは考えにくいとの見解もあるが 、むしろキャリアを維持するための包括的な職業訓練(Off-JTとOJTの双方)の在り方を検討すべきとの示唆を導いた。 次に、日本の高齢者雇用の歴史的な展開について、これまでの研究成果をふまえて公表した。日本の高年齢者雇用の法政策は、定年制度を基軸に据えた年齢に基づく法政策が継続されてきた。年齢差別の禁止は極めて限定された場面(募集・採用)に限られており、さらには実効性も疑問視されている。しかるに、今後の大規模な人口構造の変化は、従来からの法政策に見直しを迫っており、就労意欲が高く、かつ、多様な高齢者像を反映した新たな施策が求められる。今後の展望としては、固定的・一律的な高齢者概念に囚われることなく、他の雇用政策との整合性を保ちつつ、非正規労働者への配慮を行うことを前提に、年齢差別禁止アプローチを検討するべきであるとの結論に達した。 最後に、コロラド州デンバーの現地調査では、州政府担当者の尽力により貴重な1903年立法資料の原典に接し、同法に関わる二次資料のリサーチを行うことができた。
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