アメリカの年齢差別禁止法(ADEA)の差別禁止法と法政策の両側面に着目し、新老年学の知見も踏まえつつ、労働者の引退過程にいかなる影響を与えたのかを分析した。同法についての検討を行う際には、年齢の特質やエイジズムに関する諸研究にも十分留意すべきである。手続き規制による労働者の意思による引退過程の確保は、老年学の観点からも重要となる。 日本の高年齢者雇用をめぐる法政策は、今後の大規模な人口構造の変化により、大きな見直しを迫られている。今後の展望としては、固定的・一律的な高齢者概念に囚われることなく、非正規労働者への配慮も行うことを前提に、年齢差別禁止アプローチを積極的に検討すべきである。
|