本研究は、刑法において問題となる「自由」の概念とその機能を明らかにすることを目的とする。「自由」の概念は、刑法理論上、犯罪成立が問われる場面において、一方では、犯罪行為者の「責任」、他方では、自由に対する罪における「保護法益」の内実をなす概念として登場する。本研究は、第一に、哲学上の自由意志論争を参照しながら、刑事責任を阻却する「不自由」(免責)の本質について考え、それが「日常的自由」(行動の自由、意思決定の自由)の否定を基礎づける各種事由の集合であるとの仮説モデルを得た。第二に、自由に対する罪の裁判例を調査し、上記モデルが、自由に対する罪の成立範囲の分析において有効性を持つことを確認した。
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