研究課題/領域番号 |
26780048
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 周平 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10520306)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不法行為法 / 純粋財産損害 / 純粋経済損失 |
研究実績の概要 |
1 平成27年度の主な実績としては,前年度から行っているドイツ法の検討を踏まえ,日本法における純粋財産損害の問題ついて,立法論をも視野に入れた論文を公表したことが挙げられる。そこでは,純粋財産損害に関する事案類型を整理したうえで,「純粋財産損害」という1つの問題群をどのように扱うべきかを論じた。具体的には,(i)純粋財産損害の賠償は原則として否定されるべきであるとの考え方(責任否定原則)を採用すべきかどうか,(ii)民法709条の要件との関係でどのような問題があるかという2つの問題を検討した。 (i)については,一般に挙げられる責任否定原則の論拠は,純粋財産損害が問題になるすべての事例において問題となるものではないことから,一般的に責任否定原則を採用するのではなく,個々の場面ごとに検討するほかないことを示した。また,(ii)については,伝統的な違法性理論および権利侵害要件との関係を検討し,特に権利侵害要件との関係で生じる法技術的問題について指摘した。 そのうえで,立法的課題としては,ヨーロッパ不法行為法の動向(PETLおよびDCFR第VI編)を踏まえ,純粋財産損害に関する特別の規定が必要かどうかという問題について,ありうる選択肢とその問題点を示した。 2 以上のほか,今年度は,ドイツ不法行為法の基本構造をめぐる近時の動向について,研究報告を行った。そこでは,ドイツ不法行為法の基本構造を正当化する見解と,それに反対して責任法の再構成を図る見解の対立を分析したが,その中で,純粋財産損害の賠償を基礎づける正当化根拠についても見解の相違があることが明らかになった。後者の見解がドイツで広範な支持を得ているとはいいがたいが,純粋財産損害の位置づけは,ドイツ不法行為法のあり方を規定する1つの重要な要素であることから,このような議論を分析することには,無視できない重要性が認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には,ドイツ不法行為法における純粋財産損害の問題について一定の知見を得たことを前提として,日本法上の議論の整理と立法的課題の指摘を含む論文を公表することができた。確かに,個別の問題についてはまだ十分な分析を行っていないところがあるが,上記のような具体的な成果を挙げたことから,研究目的の達成度について「おおむね順調に進展している」ものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度まで,純粋財産損害の諸問題について広く検討を行ってきたが,結果的にやや問題意識が拡散していたため,平成28年度においては,焦点を絞った検討を行い,個別のテーマについて論文をまとめる作業を開始する予定である。 また,当初計画によれば,不法行為の一般条項を有する点でわが国との共通性が大きいフランス不法行為法の検討を行うことによって,ドイツ法を相対化するとともに,日本法へのフィードバックを容易にすることが必要である。したがって,平成28年度中にはフランス法の検討に着手したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では,平成27年度の後半にドイツに赴き,資料収集および聞き取り調査を行う予定であった。しかし,別の科研費を使用してドイツに行く機会があり,その際に一定の調査を行うことができたため,その限りでこの科研費を使用する必要がなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の残額については,ドイツでの調査を踏まえてさらに調査すべき事項が明らかになったことから,そのための文献購入・整理費用にあてる予定である。また,論文をまとめるにあたって,積極的に研究報告・意見交換を行い,研究内容の改善に努めることが必要であり,そのための国内旅費としても使用したい。
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