1 当初計画によれば,平成28年度はフランス法の検討を進める予定であった。しかし,折しもドイツでの在外研究を開始することになったため,やや軌道を修正しつつ,ドイツ法を中心とする検討を引き続き継続することとした。 責任法と財産保護という研究課題との関係でいえば,最近の博士論文・教授資格取得論文等を見る限り,現在のドイツでは商事法との交錯領域に関連するテーマが注目を集めているようである。そのような事情から,平成28年度は,従来よりもやや視野を広げ,主として資本市場における純粋財産損害の諸問題(とりわけ,投資者保護との関係で,虚偽情報の開示や格付会社による不適切な格付けをめぐる問題)について一定の調査を行った。もっとも,ドイツにおける議論はやや個別化・各論化が進んでいるようにも見受けられるうえ,本年度に行った調査は概括的なものであるため,その全体像を総合的に分析し,一般理論へのフィードバックを行うためには,なお時間を要する。 2 特に在外研究の機会を利用した活動としては,フンボルト大学(ベルリン)に客員研究員として滞在し,受入教員であるゲルハルト・ヴァーグナー教授と意見交換を行うほか,研究課題に関連する各種ワークショップ・シンポジウム等にも必要に応じて参加し,情報収集を行うことができた。 また,ヨーロッパレベルでの法比較をも視野に入れ,ドイツ法を多角的に分析するため,マックス・プランク外国私法・国際私法研究所(ハンブルク)において短期の研究滞在を行い,資料収集および意見交換を行った。
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