本研究においては、会社の労働法令遵守のための規律付けの一つとして、取締役の労働者に対する損害賠償責任に関する考察を行った。近時、日本では会社の賃金未払事件や安全配慮義務違反に関する事件において、取締役が会社法429条に基づき、労働者に対して未払賃金額相当額の損害賠償の支払いや人身損害に係る損害賠償が求められる事案が散見される。本研究では、アメリカ及びカナダにおける取締役の賃金責任に係る比較法的考察を通じて、取締役の賃金責任の根拠を明らかにし、また労働者の財産的・人身的損害についての取締役の責任を日本法研究により検討を行った。本研究では一定の要件の下での取締役責任を負わせるべきとの結論に至った。
|