本研究によりケベック民法典における第4編第7章の「他人の財産の管理」の個々の条文の意義とともに、その理論的基礎に権限(pouvoir)概念が据えられうることが明らかになった。また、ケベック民法典が財産編に設けられた理由としては、信託と充当資産との密接関連性があることが明らかになった。ケベック民法典が「他人の財産の管理」を包括的に規定した発想は、我が国の債権法改正における「役務提供契約」の総則的規定を設ける議論と通底するところがある。さらに、所有権理論や、自己の財産の管理を再検証する契機としての意義を有する。
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