研究課題/領域番号 |
26780060
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
稲垣 朋子 三重大学, 人文学部, 講師 (70707322)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共同親権 / 面会交流 / 情報提供請求権 / ドイツ法 |
研究実績の概要 |
本研究は、離婚後の親権行使及び面会交流のあり方を、共同親権制度を視野に入れつつ再検討することを目的としている。その際には、共同親権が認容されない(されるべきでない)単独親権の場合においては、子の福祉をいかなる方法で保障していくのが望ましいかという側面にも目を向けておかなければならない。そして、共同親権制度下での親権行使及び面会交流の態様と、単独親権制度下のそれらとの異同を明らかにすることが重要である。
そのような認識のもと、今年度は、まず文献調査に基づく研究を行った。その過程で、共同親権制度を導入しているドイツ法について、共同配慮と交流権・情報提供請求権の関係に注目した。ここまでの研究結果は、「ドイツにおける離婚後の共同配慮の基本構造」として、国際公共政策研究19巻2号(平成27年3月)に掲載した。
その原稿執筆後(12月頃~)は、当初の計画よりも早く、平成27年3月にドイツでの現地調査を行う機会を得たため、その準備に集中した。ヒアリングは、家族法の研究者、裁判官、少年局、ドイツ少年援助・家族法研究所に対して行った。共同親権が実際にどのように運用されているのか、単独親権の場合の相違、また、共同親権の法律上の規定と現実の差、近年ドイツ国内で盛んに議論されている交替モデルに関しての各立場での見解などを伺った。これらのことは、文献研究では具体的に知ることのできなかった事柄であり、大変有意義なヒアリングであった。また同時に、文献研究では不確かであった点を複数の関係者に確認し明らかにすることができ、今回の調査は平成27年度以降の研究の進展に向けての貴重な機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、離婚後の親権行使及び面会交流のあり方を、共同親権制度を視野に入れつつ再検討することである。そのためには、共同親権制度下での親権行使及び面会交流の態様と、単独親権制度下のそれらとの溝が何であるかを明らかにすることが重要である。 平成26年度は、最初のステップとして、主に、単独親権の場合における子の福祉の保障に関する研究を固める計画を立てていた。平成27年3月に、予定よりも早くドイツでの現地調査を行う機会を得たため、ヒアリング内容は当初の研究計画を先取りする形のものとなった。ただ、後半はヒアリング調査に焦点を合わせた研究の深め方となったので、今後は文献に基づく研究をもう少し広範に行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度末のドイツでのヒアリング調査で得た知見を、これまでの文献調査と結びつけて論文として公表することが第一の課題である。 一方で、平成26年度末にヒアリング調査を行った際、調査項目を一定範囲に絞ったため、ドイツ法との比較において、残された研究課題も多い。たとえば、子の個人的状況に関する情報請求権などの裁判例の分析、交替モデルの場合の養育費支払いをめぐる裁判例の分析などには未だ着手していない。これらの部分を見ることなく、離婚後の子の福祉の幅を拡張するための総合的な研究を完成させることはできない。ヒアリング調査の際に、そのような点についての動向を伺ったり、関連する資料をいただくことはできたため、平成27年度は、それらを出発点に文献研究をより深めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に海外調査を行い、その旅費を余裕をもって見積もっておく必要があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、文献研究のために様々な図書・雑誌(ドイツ語文献を含む)が必要である。その購入に充てる。
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