研究課題/領域番号 |
26780060
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
稲垣 朋子 三重大学, 人文学部, 准教授 (70707322)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 共同親権 / 面会交流 |
研究実績の概要 |
本研究は、離婚後の親権行使及び面会交流のあり方を、共同親権制度を視野に入れつつ再検討することを目的としている。 現在、わが国では、両親の別居・離婚後の子の監護のあり方について、面会交流や養育費の問題解決をめぐり、様々な議論がなされている。そして、養育の共同性・共同責任をどこまで認めるのかに関連して、離婚後の共同親権の是非も問われるところであるが、それは親権法の基軸の転換を意味するため、賛否が拮抗している。しかし、いずれにしても共同親権制度の特徴と課題を明らかにすることは、「子の福祉」の追求に貢献しうる作業ではないかと考える。面会交流や養育費について、養育の共同責任の方向に向けて徐々に舵を切っていくための手がかりが秘められている可能性もある。また、共同親権を主軸とする制度のもとにおいても、単独親権が望ましいとされる場合は当然あり、それらの峻別を把握しておくことも議論の前提として求められる。 そのような問題意識のもとで、今年度はこれまでの研究の整理を行い、11月の家族<社会と法>学会で「ドイツ判例法にみる離別後の配慮権と子の福祉」をテーマとして個別報告を行う機会を得た。その後、その内容を学会誌に論文としてまとめ、そこでは、より具体的に、仮に日本において共同親権の導入を考えるとすればどのような手続が考えられるかを離婚の方法別に検討した。一方で、日本では面会交流について、共同養育計画が争点となり注目を集めた裁判例もあったため、現状を踏まえる意味において、そのような裁判例の研究もあわせて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、親権と面会交流、養育費の連関を捉えることが目的であり、そのうち特に面会交流については、学会報告の準備の過程で多くが明らかとなった。一方で、親権と養育費の関係については、比較対象国であるドイツの離婚後の共同親権下の養育費分担の態様が複雑であり、その正確な理解に時間を要したことから、まだ十分に検討できたとは言い難い状況である。このように、今年度の研究は親権と面会交流の関係にやや傾いたことは反省すべき点である。親権のあり方と養育費の関係については学会報告においても質問をいただき、重要な点であることを再認識したため、今後、研究を深めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、文献・裁判例を読み込み、それを整理し学会・論文等で公表するための作業に終始したが、平成29年度はまた新たな知見を海外において直接得られる機会をもちたいと考えている。現地調査のほかに、研究分野を含むテーマのもと開催される国際学会(7月、オランダ)にも参加する予定である。 そして、面会交流・養育費それぞれと親権の関係についての研究も進め、最終的にはそれらの研究成果を論文の形で公表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にオランダで開催される学会に参加するため、その費用が生じることが主な理由である。また、十分に明らかにできていない点、これまでの研究において新たに考察すべき課題として浮上した点について、国内外の文献を入手する必要もある。
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次年度使用額の使用計画 |
学会参加のための費用についてはできる限り早めに見積もるとともに、その分を差し引いた残額についても、計画的に執行する。
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