本研究は、保険とクレジット・デリバティブの法的区別の問題について、アメリカ法の議論を参考に検討を行うものである。 わが国の支配的見解は、「損害てん補基準」を用いて、保険とクレジット・デリバティブの法的区別を説明してきた。しかし、この見解の下では、損害てん補の要素を具備する可能性のあるカバードCDSのような取引について、保険との異同を十分に説明することができないという限界があった。この点について、本研究では、「損害てん補基準」に加えて、「規制潜脱目的の取引移転の防止」という実質的理由を用いることにより、保険とクレジット・デリバティブの関係を整理することができると考える。
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