本研究は、父母の離婚後の子の居所移動をめぐる紛争に対応する法的仕組みの考案を目指した。その成果として、具体的な制度提案には至らなかったが、次の示唆を得た。(1)子の居所移動を調整する法的仕組みは、離婚後の共同親権に伴う親の居所指定権の共同化というより、子の養育を受ける利益の実効的確保の前提としての子の居所決定という観点から構築すべきである。(2)結果としての監護親の子連れ転居「制限」を強調し過ぎるべきではない。どのような転居であれば容認され得るかの基準を「子の利益」規範として明示することで、子の居所移動に関する当事者の自律的な決定と「子の利益」の実現を促し支えることを目指すべきである。
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