研究課題/領域番号 |
26780073
|
研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
河井 理穂子 埼玉工業大学, 人間社会学部, 講師 (10468548)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 著作権 / 権利制限規定 / オンラインストレージ / フェアユース / 教育目的利用 / 学校教育 |
研究実績の概要 |
オンラインでの教育目的の著作物利用に関する米国裁判例(Georgia State University e-reserve case)におけるAmicus Brief(法廷意見書)の著者ら、及びGeorgia State University のe-reserve運営担当者にヒヤリング調査を行った。 Amicus Briefとは、裁判の過程において当事者以外の第三者が提出する意見書で、当事者ではないがその裁判の判決に大きく影響を受ける第三者や学者などが争点となっている部分などについて法的な意見を述べるものである。その意見を判決に取り入れるか否かなどの取り扱いについては、裁判官に全て任されている。しかし、Amicus Briefは、判決に対して一定の影響力があることが学術的研究により明らかになっている。 本裁判では、被告による大学教育での講義資料のネット配信(オンラインストレージ)が、Fair Use(米国著作権法107条)の適用を受けるかどうかが問題となった。原告側、被告側それぞれの立場で書かれたAmicus Briefの著者らへのインタビューでは、主に地裁と控訴裁の Fair Use4要件の判断に関する意見を聞いた。ヒヤリングを通して、判決文を読んだだけでは得られなかった本件に関する論点、解釈などを聞くことができた。また、Georgia State Universityのe-reserveシステムの運営者(図書館関係者)に本システムの仕組みを教えてもらうことができ、裁判例のより具体的な理解につながった。さらに図書館関係者へのヒヤリングでは、大学における講義資料の電子的ライセンスシステムとその現状などを聞くことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
家庭の事情により、平成28年度は研究時間を十分に確保することができず、研究の進捗に遅れが生じた。また、日本の著作権法の教育目的の著作権制限規定に関して、法改正の動きが出てきたこと(教育機関での授業の過程における教材・参考文献や講義映像等の送信について、異時公衆送信に補償金請求権を付与しつつ、新たに法第35条の権利制限規定の対象とすることが、文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の中間まとめ(平成29年2月)で方向性として示された)、研究代表者が当初予定をしていたアンケート調査とほぼ同内容でより大規模なアンケート調査が実施されたこと(「学校における著作権教育のアンケート調査報告書」(平成27年6月 公益社団法人著作権情報センター))などから、調査内容、研究内容に若干の変更が必要となったため。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの研究成果を元に、現段階での日本の著作権法の教育目的の制限規定の適用を受けない部分、グレーな部分を明らかにする。さらに、今後の法改正(教育機関での授業の過程における教材・参考文献や講義映像等の異時送信に関する補償金制度など)の可能性が高くなったため、法改正によって明確になる部分、依然としてグレーな部分も明らかにする。また、法改正の問題点についても検討する。その際に、いわゆるライセンスによる教育目的の利用がどのような位置づけになっていくのかについても検討する。教育関係者と権利者に対して、提案されている法改正に関するヒヤリング調査も行う。 また、同様のオンライン上での著作物の教育目的利用に関して、日本とは別のアプローチを取っている米国の制度(主に一般的な制限規定であるFair Useで対応をしている)について、現在までの本研究の成果を元に改めて整理をする。さらに、米国の電子的複製ライセンスの現状を明らかにするため渡米しての対面ヒヤリング調査を予定している。 日米の教育目的の著作物利用に関する制度の相違点を明らかにし、日本の教育目的の著作権法制度設計において考慮すべきことなどを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ヒヤリング調査に関して変更する必要性が生じたため
|
次年度使用額の使用計画 |
ヒヤリング調査(日米)
|