大学教育での講義資料のネット配信などが、Fair Useの適用を受けるかどうか問題となった米国の裁判で、裁判所は、利用されていた著作物に関して電子的システムなどを介して合理的に(reasonably)利用許諾を行なっていた権利者に対しては、Fair Useが有利に働くとした。これに関して、コロンビア大学ロースクールのJane C. Ginsburg教授にヒヤリング調査を行なった。彼女は、Permitted-but Paid(無許諾で利用できるが有償)という考え方を主張していた。これは、パロディなどの著作物利用に関してFair Useの適用を認める一方、著作物を丸ごとまたはかなりの部分を何も手を加えずに利用する場合、教育利用などの公益に合致すれば、許諾を取る必要はないが一部有償で利用可能とするべきであるという、補償金制度のようなものを想定している。Fair Use規定が存在する米国で、補償金制度のようなものが両立する可能性があるということが彼女へのヒヤリングを通して分かった。 一方、日本では2018年2月23日、教育現場における他人の著作物の利用に関する著作権制限規定の改正案が閣議決定された(2018年5月18日成立)。学校等の授業や予習・復習用に、他人の著作物を用いて作成した教材をネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為について許諾なく、ワンストップの補償金で行うことができるようになる。教育目的利用の補償金制度を設ける一方で、日本の教育目的利用の著作権利制限規定にFair Useの導入の可能性があるかどうかについてGinsburg教授へのヒヤリングを元に検討した。
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