本研究は、著作物利用の手続きを簡素化して費用を下げることに焦点をあて、韓国および英国におけるデジタル著作権取引所(Digital Copyright Exchange:DCE)の取組みを紹介し、欧米の動向を踏まえて、円滑な著作物流通のための制度設計への示唆を得ようとするものである。 韓国および英国における現地調査および現状分析の結果、1)既存市場をオンライン化し、合法コンテンツを増大させ、既存の集中管理業務をデジタルネットワークへ対応させることと、2)権利情報を集約・新規登録・拡大し、ライセンスをオンラインワンストップ化できる環境を助成することが必要であることが分かった。 日本が優先的に取り組むべきことは、信頼できる包括的な権利情報DBの構築とオンラインワンストップ利用許諾による利用簡素化の推進である。そのためには、すでに始まっている業界ごとの権利情報DBを集約・連携し、権利情報DBが不在する分野においては、DBを新規作成することが考えられる。関連して、既存の著作権登録制度や裁定制度に関する法整備も考えられる。 オンラインマーケットを作るのは基本的に民間の機能であり、政府が主導すべきものではないが、デジタルコンテンツ流通において中核となるともいえる「効率的なオンラインワンストップ利用許諾システム」を構築するためには、「信頼できる包括的な権利者情報DB」が前提となり、その構築は、民間の推進を継続しつつ、 制度的障害をなくすための政府の支援が必要になる。政府の介入が考えられる分野として、標準化された権利情報DB構築の奨励、権利情報DBの信頼性を改善するための措置、登録や利用のインセンティブを与える措置などがある。なお、本研究と関連して、2015年度に文化庁にて著作権情報DB構築に関する検討会が行われており、2016年度も検討が続く予定である。
|