この研究では、ロマ民族に対する構造的な差別(言説、政策、官僚的対応)という観点から、現代ルーマニアの歴史的な政治体制を比較し、共通点及び相違点を特定し、分析した。共通点に注目した場合、全ての政治体制(立憲君主制、独裁体制、民主主義体制)を支える権力ダイナミクス(トップダウン政治、統治・可視化、簡略化)に、進歩的な言説及び科学的なツールが合わさり、ロマに対する差別的な構造がつくられたと論じる。政治体制が変わる度に、進歩主義が謳われるものの、ロマに対する差別は異なる文脈において再利用され、深く根付くことになった。従って、今日に至るまで、依然としてロマに対する差別は「当然視」されている。
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