今年度は最終年度であり研究成果のまとめに主として時間を使うはずであったが、2017年度は10月に急遽、衆議院議員選挙が実施されたため、前年同様、これまでも協力関係にあった2つの高校に調査を依頼し、衆議院議員選挙前後での高校三年生の政治意識と政治知識の変化を計測した。結果として、やはり政治知識や意識は選挙権が存在してもすべての面で増えるわけではなく、一部の特定の面の知識のみ、選挙権の存在しない有権者に比べて増えるということが分かった。このように、当初計画とは異なり、合理的な有権者の想定は正当化が難しい面があるということが分かった。この調査結果は前年の調査結果と併せて論文にまとめるべく作業を行っている。また前年までの調査結果は資料として報告を行っている(中村・田中・秦 2017 中村・田中・秦・辻 2017)。 その他、今年度は研究成果のまとめとして、前年に行った非政策非言語情報を用いた有権者の意思決定についての研究を進展させ、論文としてまとめる作業を行った。まず、動画レタッチングを用いた候補者の印象変化に関しての研究は、追加的なデータの収集を行い、研究として完成させた(中村 2018d)。この結果として、有権者は政治家の一部の特性(traits)に関しては非言語情報を用いた推論を行うことを確かめた。また、ジェンダーの違いによる候補者評価の研究を前年から引き続きまとめており、これはEuropean Consortium For Political Researchでの報告を行い反応を確かめたうえで(Nakamura 2017)、その後、学内の雑誌に単純な分析結果をまとめるかたちで出版し公表した(中村 2018a)。関連して、実験に関連する書籍の書評を執筆する機会を得たため(中村 2018c)、さらに実験室実験の手法などについて研究を進めることができた。
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