研究課題/領域番号 |
26780088
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研究機関 | 釧路公立大学 |
研究代表者 |
菅原 和行 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (90433119)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アメリカ / 連邦政府 / 官僚制 / 公務員制度 / 応答性 / 政治任用 / 行政改革 |
研究実績の概要 |
本年度はアメリカ連邦官僚制の応答性に関して、オバマ政権に焦点を当てて研究を進め、以下の点を明らかにした。 近年のアメリカでは、議会におけるイデオロギー的分極化の影響を受け、上院の承認過程における政治化と長期化が顕著に見られる。とりわけ、オバマ政権の政治任用過程は共和党のフィリバスター(議事妨害)やホールド(議事の保留)による影響を強く受け、従来の政権以上に遅れが見られる。また、対抗措置として実施された休会任命も、共和党のプロフォルマ(休会状態を作らせないようにする戦術)によって妨害されたうえ、プロフォルマの合間に強行した任命に関しても連邦最高裁によって無効の判断が下された。このように、近年、政治任用による応答性の確保は、その効果がますます限定的になりつつある。 一方、オバマ政権では行政管理の改革において一定のリーダーシップを発揮している。クリントン政権から続く成果主義の行政改革は、オバマ政権においてさらなる進展が見られた。政策目標の設定や業績の評価、成果情報の予算への反映など、より包括的・体系的に改革が推進されている。こうした行政管理の改革は、「結果の管理」という観点から不足する応答性を補完するとともに、業績の向上を図ることにより官僚制の専門性にも一定の寄与を果たすものであった。 一連の行政改革では行政命令や大統領覚書などがおもに用いられため、かなりの程度、議会における政治的対立を回避して実施することが可能であった。また、成果主義による改革は「小さな」政府を志向する共和党の立場とも重なる面もあり、政治任用過程に見られたような激しい抵抗を受けることもほとんどなかった。一方、医療保険改革のように巨額の財政支出をともなうものに関しては、今後もイデオロギー的分極化の影響を強く受けることが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、本年度は学会報告や論文執筆などの形で研究成果を発表する予定であったが、資料の分析に時間を要し、十分な成果をあげることができなかった。連邦政府全体や各省庁における最新データは発表までにタイムラグあるため、当初の予定通りに資料が入手できなかったことも研究が遅れた要因であった。
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今後の研究の推進方策 |
まずはオバマ政権の人事行政に関して、これまでの研究成果を早期に論文等の形で発表できるよう取り組む。また、それと並行して、昨年度に収集した1970年代の行政書簡や議会資料の分析も継続して行い、こちらも論文として発表することを目指す。 くわえて、政権以降期にはバロイング(政治任用者の職業公務員への転換)が増加する傾向があるため、連邦会計検査院等のデータを用いて、オバマ政権におけるバロイングの動態も分析する。
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