平成27年度は、本研究プロジェクトの初年度であり、全体の研究の基礎的研究を行った。本研究では、アメリカ大統領が法案署名時に付与する署名時声明という文書を研究の対象としている。この文書で、大統領は、自らが署名した法律の一部について、違憲性を主張し、執行をしないことを宣言する。もちろん、このような行為を、アメリカ合衆国憲法は認めていない。 これまでの研究では、レーガン政権とその後のクリントン政権において、法律家が大統領権力の拡大を正当化するような法律論を持ち込むことで、法の内容を変更するような署名時声明が用いられていることが明らかにされている。本研究プロジェクトの目的は、その後のジョージ・W・ブッシュ政権とオバマ政権において、署名時声明がどのように用いれているのかを明らかにすることである。 そこで平成26年度には、ブッシュ大統領とオバマ大統領が付与した署名時声明のデータ・セットを構築することを目的とし、これを実現した。大統領の署名時声明の文言は、『大統領公式発言集』(Public Papers of the President)とAmerican Presidency Projectのウェブサイトから入手することができる。署名時声明は、全てが法の内容を変更しようとするものではないので、独自のコーディング規則をつくり、署名時声明を実質的に法内容を変更するものと、そうでないものに分類した。 作成したデータ・セットからは、ブッシュ大統領が実質的署名時声明を頻繁に用いていることと、オバマ大統領も同じく実質的署名時声明を用いていることが明らかになった。
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