研究課題/領域番号 |
26780089
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
梅川 健 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (40635033)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アメリカ政治 / 大統領制 |
研究実績の概要 |
平成27年度には、平成26年度において行った基礎研究をもとに、研究をさらに発展させることができた。
本研究プロジェクトは、アメリカ大統領による一方的な法の不執行という現象に着目し、それを可能にするメカニズムを明らかにすることを目的としている。このために、まず大統領の署名時声明に着目した。署名時声明とは、アメリカ大統領が法案署名時に付与する文書である。この文書によって、大統領は自分が署名した法律の一部について違憲性を主張し、執行しないと宣言する。アメリカ合衆国憲法は大統領に対しては、法案に署名するか拒否権を行使するかのみを認めており、署名しながら一部についての執行を拒否するということを認めていない。
平成26年度には、ジョージ・W・ブッシュ政権とバラク・オバマ政権において、どのような署名時声明が出されたのかについてのデータ・セットを作成した。平成27年度には、このデータ・セットに基づいて両政権における基本的な傾向を明らかにした後に、それぞれの政権における重要な事例についての研究を行った。その結果、両政権は議会と対立しながらも、政権内部の法律家による憲法解釈を頼りにすることによって、署名時声明を用いて法を一方的に読み替えることを正当化していたことを明らかにした。同時に、両政権における大統領の振る舞いをつぶさに観察していく中で、大統領は一方的に法の内容を変更するために、署名時声明以外の手段も用いていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度には、本プロジェクトの平成26年度と平成27年度の成果の一部を、梅川健『大統領が変えるアメリカの三権分立制:署名時声明をめぐる議会との攻防』(東京大学出版会、2015年)として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトでは大統領による一方的な法の不執行という現象がなぜ、どのように生じているのかを明らかにすることを目的にしており、そのために署名時声明という大統領の道具を分析してきた。
平成27年度はその成果の一部を単著としてまとめることができたが、その中で、近年の大統領が署名時声明とは異なる形式によって、法の不執行を実現している可能性があることがわかった。
今後は、当初の予定通り、ジョージ・W・ブッシュ政権において法の不執行がどのように正当化されていたのかについて、政権内部の関係者へのインタビュー調査を行うことで、さらに調査を進めるとともに、署名時声明ではない形式での法の不執行の手段についても調査を行う。
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