現代アメリカ大統領は、法案署名の際、その一部について違憲無効だと署名時声明(signing statement)の中で宣言する。合衆国憲法は大統領にこの権限を認めていない。大統領は、どのようにしてこの道具を獲得したのだろうか。 きっかけはカーター政権にあった。ウォーターゲイト後の議会は、大統領の法執行を監督するための仕組みを導入したが、これが憲法違反だと大統領は署名時声明で主張した。レーガン政権では議会拒否権に限定せずに広く署名時声明は用いられるようになった。大統領は独自に憲法解釈ができるという保守的法律家の法律論に支えられていた。今日まで、政党を問わず、大統領は署名時声明を用い続けている。
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