本研究は、「政党化する政治文化――自由民権運動期を中心に」をテーマとする。具体的には、明治十四年前後に最盛期を迎える自由民権運動を、とりわけ政治文化――なかでも「政治小説」――に焦点をあてて分析する。その際、第一に、「政治小説」を文学作品としてよりはむしろ新聞・雑誌や、演説会と同様の政治的意見表出のメディアとして把握する。第二に、「政治小説」を政党と(潜在的)有権者との間の政治的意見集約のアリーナとして把握し、演劇的熟議の観点から考察する。第三に、同時期の西欧における「政治小説」の動向や、梁啓超を介した清朝中国の知識人の動向との比較の視点を重視する。
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