本年度は以下主に以下4つの活動を行った。 ①社会思想史学会のポスト基礎づけ主義を巡るセッションにおいて「デモクラシーと正しさ」という題名で報告を行った。従来の正統性にのみ依拠したデモクラシー擁護に対して、デモクラシー擁護には、何らかの意味で「正しさ」へコミットメントが必要であることを示し、その「正しさ」へのコミットメントにおいて求められる条件について検証を行った。昨年度から続く「認知デモクラシー」論についての研究の成果であり、デモクラシーと正しさとの関係を考える上で一つの基点となる研究となった。 ②近年の代表制の危機という状況に応じ、代表ということの意義を捉え直す「代表制の複数性と規範性」を行った。近年の代表論における構築主義的転回に注目し、そこにおいて従来の「代表=選挙」という一元的な理解が修正されている点を評価しつつも、新たに代表関係が同時に複数並立して生じてしまうという問題が生じる点を指摘し、その問題を解決する方途を模索した。 ③同じ近年の代表制の危機という問題意識から出版された山崎望・山本圭編『ポスト代表制の政治学』への書評を『社会思想史研究』に掲載した。論文集に通底する問題意識を共有しつつも、そこからどのように今後の展開を行ていくのかと点について問題提起を行った。 ④図書新聞において『「正しい政策」がないならどうすべきか』(ジョナサン・ウルフ 著、大澤津・原田健二朗 訳)への書評を執筆した。この本が公共政策、政治理論のどちらにとっても意味ある貢献である点を示した。
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