本研究の目的は、新しい原子力規制組織の環境省設置をめぐる政治過程の事例研究を通じて民主党政権期の環境政治を検証することである。 平成28年度の研究課題は二つに分けられる。第1に、福島第一原子力発電所事故および原子力規制委員会に関する注目すべき研究が複数出版されていることを受けて、平成26-27年度に進めた民主党内および政府内の政策決定過程と環境政治をめぐる議論の再確認を続けた。これに直接関連する研究の公刊には至っていないものの、その作業を進めるなかで、副次的ではあるけれども重要と考えられる研究を2点進めることができた。一つは、政策過程論および政治過程論の理論的かつ史的な検討を行うなかでの、それらが内包する公衆、民意の位置づけ方についての考察であり、もう一つは、民主党政権期の環境政治の事例としての災害廃棄物の処理に関する検討である。 第2に、平成26-27年度に聞き取り調査の準備時間の確保や予算の有効活用が十分に行なえなかったことを受けて、平成28年度まで研究期間を延長することとなったが、補完的な調査を実施した。民主党政権期の環境政治の特徴の一つは、福島第一原子力発電所事故や原子力規制委員会に関する文献・資料が盛んに公表されたこと自体にあるが、上記の第1の研究課題を通じて把握した主要な政策決定者の意図や行動、またそれらの背景に関する聞き取りを行うことで、民主党政権期およびその前後の政権の環境、エネルギーに関する政治過程への理解を深めることができた。
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