日中の相互不信の克服が急務である。本研究は国際関係論の「認知」(perception)と「誤認知」(misperception)の理論から、理論分析枠組みを構築し、それを「日中3.11災害外交」を実証研究のケースとして日中双方はいかに当初の「善意的なイニシアチブ」から最終的には「不信の再生産」にまで発展したかについてのプロセスを追跡し、日中関係における不本意の相互不信再生産のメカニズムを解明した。 日中相互不信に関する既存研究は日中関係の歴史的要因、特殊性に過剰な焦点を当て、主に実例研究の手法で行われ、日中も普通の国と国との国際関係における共通の側面があるという事実が軽視されてきた。このアンバランスさを是正することが急務である。本研究は「日中関係研究の理論分析の欠如」の克服を念頭に、二国間の特殊性を強調する実例中心の既存研究から一線を画した。本研究は世界でも例に見ない高い相互依存を持ち、関係改善に意欲を見せる日本と中国において逆に相互不信が再生産されるという矛盾する現象のパズルを国際関係理論と実証研究を融合した視点から分析を行った。 研究成果として、日本国際政治学会学術誌『国際政治』第184号『国際政治研究の先端13』に学術論文「日中の誤認知と相互不信の再生産のメカニズム ―日中「三・一一災害外交」の失敗をケースに―」(2016年4月、第1-15頁)が掲載された。
|