研究課題/領域番号 |
26780104
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大西 富士夫 日本大学, 国際関係学部, 助教 (20542278)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非北極圏諸国 / ウクライナ危機 / 北極地域秩序 / 北極評議会 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、冷戦期から現在に至るまでの北極海における地域秩序の形成と発展の過程を5段階に区分し、北極海をめぐる国際政治の動態を総合的に明らかにすることである。当該年度は、北極秩序の起源(第1段階)、及び北極圏8か国体制の成立時期(第2段階)についてヒアリングを中心とする研究計画を立てていた。しかし、ウクライナ情勢が悪化し、北極国際政治にも一定の影響を及ぼしたため、当初の計画を変更し、現行の北極秩序に対する挑戦(第5段階)について、非北極圏諸国の参入とともに、ウクライナ危機の影響の解明について重点的に研究を実施した。 その結果、現行の北極秩序は以下の2つの新しい挑戦に直面していることが明らかとなった。まず、非北極圏諸国の参入については、非北極圏諸国が主に資源や航路の「ユーザー国家」としての関与を深めつつあり、北極プレーヤーの多様化をもたらしていること、加えて、商業的発展という新しい協力分野を創出する原動力となっていることが明らかとなった。次に、ウクライナ危機の影響については、米ロ関係、EU-ロシア関係の悪化により、カラ海での資源開発からのエクソン・モービルの撤退、ヤマルLNGプラントの生産開始時期の繰り延べ、北極海航路のトランジット数の減少等、経済分野を中心に影響が見られた。軍事安全保障面では、ウクライナ危機の発生以前より、ロシア-NATO北極諸国との間で軍事的能力の向上に向けた取組みが行われており、この傾向は、ウクライナ危機後も引き続き継続している。政治面では、特に北極評議会の会合等において一部ボイコットなどが発生したものの、北極評議会の運営は概ね順調に進んでおり、ウクライナ危機の影響はさほど大きくなっていない。従って、新しい挑戦は現行の北極秩序を機能不全に貶めるまでに至っていないものの、今後の北極秩序の行方は、北極評議会の議長国となった米国の舵取りに大きく依っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、予定していなかったウクライナ危機の情勢悪化に伴う北極国際政治への影響についての情報収集にエフォートが割かれたため、初年度と最終年度の計画を入れかえるという変更が生じたものの、研究計画全体としては順調に実施できていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、北極海における地域秩序の起源及び環境保護・持続可能な開発・北極圏8か国から成る北極秩序の成立期について、ホッキョクグマ保全条約、北極化学委員会、北極環境保護戦略、北極評議会の関係者へのヒアリング調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウクライナ情勢など国内外の発表に多くのエフォートを割いたため、当初、物品費で購入予定としていたプリンター複合機の購入を行えず、次年度使用額が生じた。また、研究計画における実施順序の一部変更により、外国旅費の使用額にも差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は、研究計画の予定通り、外国旅費等の旅費を消化するとともに、26年度中に使用できなかった物品費も消化する。
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