【3段階及び4段階についての資料集及び実証的考察】海洋開発・航路利用・北極海沿岸5か国からなる新北極秩序による挑戦の時期である第3段階について、北極5か国による新秩序へのイニシアティブをとったカナダ側の資料集を収集した。また、新秩序への動きの冷却化と90年代に成立した北極8か国にもとづく北極秩序の発展・強化の第4段階に関しては、新秩序の樹立を否定し、従来の北極秩序の維持に積極的に動いた米国側の資料を収集した。
【新段階としての第6段階の設定】2015年夏以降、北極国際政治において本研究の想定を超える進展があり、これを第6段階として纏める作業を実施した。具体的には、クリミア編入及びシリア空爆をめぐる米欧とロシアとの対立関係の深刻化を背景として、米国は、北極協調体制の機能不全を回避するため、従来の北極8か国体制に基づく汎北極多国間主義を維持しつつも、米国を中核とした新たな多国間枠組みを北極において積極的に作り出す外交を展開したため、これを区分的多国間主義という概念に纏め、学会等において発表するとともに、論文等に纏めている。他方において、グローバル国際政治において修正主義路線の立場を鮮明としてきたロシアが、米国の新しい北極外交にもかかわらず、従来の汎北極多国間主義を堅持する現状維持路線している。その要因について調査するため、モスクワで開催された北極国際政治に関する国際会議に出席し、情報収集並びに研究報告を実施した。この出張で得られた成果は、論文の形で纏めた。
【本課題の取り纏め】以上の研究に加えて、本課題研究の実施によって現時点までに明らかとなった考察を纏め、国際政治学会の2016年度研究大会(幕張国際会議場)において発表した。また、本課題に収集した資料の整理のため、研究補助者を雇用した。本研究で得られた成果は、学会誌への論文投稿並びに図書等の執筆により公表していく。
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