本研究は、東アジアにおける地域協力の制度化を進めるため、ASEAN地域主義の展開過程を手がかりに、新たな地域統合モデルの構築を主な目的として展開されたものである。その成果として、一つには、共有された脆弱性の認識が国家間協力のモメンタムとして作用している側面を明らかにした。二つには、現地調査を通じて、東南アジア諸国で確認できる市民社会化という現象が、国境の壁を越えた国家間協力の障害となり得るナショナリズムを超克し、ASEANの統合を導く重要な役割を果たしている実態を究明した。そして三つには、ASEAN研究から得られた知見を基に東アジア地域統合のためのモデルを組み上げ、新たな理論的視座を提供した。
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