平成27年度は、主に、1.前年度におこなった同盟理論による日英同盟の終焉過程の再検討、および制度論を用いた新四国借款団交渉の意義の再検討の成果を含む単著研究書の出版と、2.前年度のシンポジウム報告および資料収集の成果をふまえて、第一次世界大戦後の日本経済外交の「起源・形成・転換」に関する論文執筆をすすめた。
1.は、『強いアメリカと弱いアメリカの狭間で──第一次世界大戦後の東アジア秩序をめgる日米英関係』千倉書房として、2016年3月に刊行された。2については、これまでの研究成果の一部を台湾の台北大学で行われた国際シンポジウムで、ペーパーを提出の上、口頭報告した。同シンポジウムには、経済史および政治史を中心に、台湾、韓国、日本から関連研究者が参加し、有益なコメントや質問を得ることができた。とくに幣原外交の起源と形成に関して、幣原喜重郎個人の外交理念だけでなく、外務省内の政策構想の変容と、さらに当時の外交当局者および政策決定者に広く共有されていた「総力戦後の保護主義の隆盛」に対する危機感が重要であったとの主張は、大きな反響を得た。
以上の経過もあり、本研究の最終的な知見である論文は、以上の国際シンポジウムに参加した研究者を中心に寄稿・編纂される論文集に所収される予定である。同時に、前年度に論文を公表した日英同盟の終焉過程についても、その後の本研究の進展をふまえて、オーストラリアで開かれた国際学会と国内学会でそれぞれ口頭報告を、行った。くわえて、前述の単著研究者のエッセンスについても、国内学会で口頭報告した。また、前年度に引き続き、本研究の遂行のために収集・整理した資料や統計データーのデジタル化を、2名の研究協力者の協力を得てすすめた。現在ウェブ上で公開するための、最終的な調整作業を行っており、近日中に公開予定である。
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