研究課題/領域番号 |
26780110
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
片山 慶隆 関西外国語大学, 英語国際学部, 准教授 (40436746)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メディア史 / 日英同盟 / 日露戦争 / 韓国併合 / 日本の対外認識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、韓国併合を中心として、19世紀末から20世紀初頭における東アジア国際政治と日本との関係を実証的に分析することである。この時期の日本は、日清戦争、義和団戦争、日露戦争に勝利し、イギリスと同盟を結び、台湾、韓国を植民地にするなど、国際的地位を大きく向上させた。また、日本が重視した韓国の問題をイギリスがどのように見ていたのかに関する研究も乏しい。さらに、国際的地位を向上させていく当時の日本が外国をどのように認識していたかに関する研究も多くはなかった。そこで本研究では、韓国併合を国際関係史の視点で分析すること、特に日英同盟と韓国との関係を検討すること、また、当時の日本の政策決定者やメディア、知識人の外国認識を分析することを主眼としている。 今年度は、実証的な論文を出すことはできなかったが、研究動向をいくつか発表し、史料調査も行なうことができた。最大の成果は、夏季休暇中にオランダのデン・ハーグを訪れ、国立公文書館でハーグ密使事件中の現地新聞や外交文書の史料調査を実施できたことである。オランダでの史料調査は3回目だが、以前は見逃していた史料も多数発見することができ、研究の進展のために大いに有益であった。また、国内の史料調査や復刻された史料集の読解も引き続き進めることができた。 刊行した研究成果としては、書評2本と研究動向がある。外交史、メディア史、思想史などバランスよく紹介することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、1年目にできなかったヨーロッパでの史料調査を実施できたのが大きな収穫である。オランダのデン・ハーグにある国立公文書館で、1907年に起きたハーグ密使事件の動向がわかる『万国平和会議報』(同年の第二回万国平和会議開催中に現地でイギリス人ジャーナリストのウィリアム・ステッドが発行していたフランス語の新聞)や外交文書の史料調査を行なった。これらの史料は一部、以前発表した論文で使用したことはあるが、網羅的に使用した研究はないので、非常に有益な調査であった。また、『アーネスト・サトウ日記』や『朝日新聞社史』(特に資料編)など、重要な史料集を入手し、読解を進めることもできた。 日清戦争時から1910年ごろまでの『東京朝日新聞』を中心とする日本のメディアの外国認識は、史料読解は行なっているが、今年度は論文を発表することができなかった。研究成果としては、研究動向である「2014年の歴史学界―回顧と展望―日本近現代六外交(~第一次大戦)」(『史学雑誌』第124編第5号、2015年5月)、「書評 大谷正『日清戦争―近代日本初の対外戦争の実像』」(『メディア史研究』第38号、2015年9月)、「雑誌メディア研究の現状と課題~竹内洋・佐藤卓己・稲垣恭子編『日本の論壇雑誌―教養メディアの盛衰』(創元社、2014年)を題材にして~」(関西外国語大学『研究論集』第103号、2016年3月)を刊行した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、校務の関係上、長期休暇での外国での史料調査は難しいと思われるので、国内での史料調査を例年以上に充実させたい。外交史とメディア史にまたがる研究領域なので、東京の国立国会図書館憲政資料室、防衛省防衛研究所、外務省外交史料館、近代日本文学館などでそれぞれ史料調査を実施する予定である。 一年目、二年目で史料読解を進めた成果を、三年目以降は学会誌などで発表していきたい。ある学会誌の特集号で原稿依頼を受けているが、それと関連する論稿も何本か発表して、論文集の刊行につなげたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費や史料集購入に使用するには、残金が少額だったため、1万円ほど余ってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
国内での史料調査を充実させ、東京にある複数の史料館に出張したいと考えている。
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