研究課題/領域番号 |
26780112
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
野添 文彬 沖縄国際大学, 法学部, 准教授 (00636540)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 沖縄 / 日米安保 / 米軍基地 / 沖縄基地問題 |
研究実績の概要 |
本年度は、次のような研究活動を行った。第一に、これまでの研究活動の成果を発表するべく、執筆作業を進め、二冊の本を出版した。一つは、『沖縄返還後の日米安保ー米軍基地をめぐる相克』(吉川弘文館、2016年)である。これは、これまで研究史上の空白であった沖縄返還実現後から1980年代までの沖縄米軍基地をめぐる日・米・沖関係を実証的に分析し、どのように沖縄への米軍基地の集中化と固定化が進んだのかを明らかにしたものである。もう一つは、共著『沖縄と海兵隊ー駐留の歴史的展開』(旬報社、2016年)である。本書は、これまで本格的な研究のなかった在沖海兵隊の歴史を通史的に検討したものである。筆者は、序章と1970~1980年代を担当した。これらの出版後、その内容を研究会で発表するため、東京と北海道への出張も行った。 第二に、東京、アメリカとオーストラリアへの資料調査を行った。東京では、外務省外交史料館や国立国会図書で、史料を収集した。特に、本研究の延長線上の課題として、冷戦終結前後、日本政府が日米安保や沖縄米軍基地をどのように認識していたのかについて、外務省文書や私文書、雑誌記事を分析した。アメリカでは、ニクソン大統領図書館で沖縄返還前後の米国政府の公文書を調査し、史料の公開状況を確認するとともに、当該期の米国のアジア戦略について分析を行った。オーストラリアでは、国立公文書館で、サンフランシスコ講和から1970年代までの、日米関係についてのオーストラリア政府の文書を収集した。これによってアジア太平洋の国際関係の文脈から沖縄の基地問題を意義付けることができた。 第三に、本研究の意義をより広い歴史的文脈で位置づけるべく、占領期から現在までの沖縄米軍基地や日米関係、さらには国際政治史についての文献を購入し、分析した。その結果、沖縄問題についての知識と問題意識を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はこれまでの研究成果を、『沖縄返還後の日米安保ー米軍基地をめぐる相克』や『沖縄と海兵隊ー駐留の歴史的展開』としてまとめ、出版することができたという点で、重要な進展があった。この点で、計画通り、研究は順調に進んでいるといえる。他方、最終年度に向けて、本研究の意義と課題を再検討し、さらに今後本研究を次にどのようにすすめていくべきなのかということについては、さらに考察を進める必要がある。また、本年度では海外への史料調査を行ったが、一定の成果はあったものの、顕著な成果を挙げたとまではいえず、来年度の史料調査における課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本研究計画の最終年度であり、本年度にまとめた研究成果の課題を検討し、今後どのように発展させ、次の研究計画につないでいくことができるかが大きな課題になる。 そこで、第一に、海外・国内で本研究の成果について発表・報告を積極的に行い、本研究の意義や課題についてフィードバックを得ることが重要になる。来年度はさしあたり、オーストラリアでの学会報告を予定している。 第二に、本研究の課題の一つである沖縄返還問題とはそもそもなんであったのかについて考察を深めることである。そこで、引き続き、外務省外交史料館や国会図書館で、沖縄返還の歴史を、一次資料を通して調査する。沖縄返還時や沖縄返還後の日本政府の政策を考える上で、戦後初期からの日本政府の政策を検討しなおすことが重要である。 第三に、アジア太平洋地域の視点をさらに取り込むことである。引き続き、オーストラリアでの史料調査を進めるとともに、イギリスへの史料調査を予定している。イギリスへの史料調査は当初の予定にはなかったが、戦後直後から1960年代まで、アジア太平洋地域に大きな影響力を有していたイギリスの視点は、沖縄返還問題、沖縄基地問題をアジア太平洋地域の文脈で考察する上で重要であると考えるに至った。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、本研究計画で実行できなかった海外への調査旅行を今年度にまとめていったため、今年度はその分、多くの研究費を使用することができた。今年度は、アメリカとオーストラリアという二か所について、海外史料調査を行った。今年度は昨年度の分も合わせて支出を行ったため、使用額に変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
アメリカとオーストラリアそれぞれについて、沖縄返還と日米関係、沖縄米軍基地の歴史について、史料調査を行った。アメリカでは、ニクソン大統領図書館へ、オーストラリアでは国立公文書館での史料調査を行い、一定の成果を得ることができた。
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